【注意】SUP、カヤックフィッシングする方へ

安全のためフラッグは必ず掲げるようにしましょう。(2m推奨)

定置網内へ入る、係留する、仕掛けを引っ掛けるなどが多くなっており、漁師さんとのトラブルが増加してるようです。

SUP、カヤックを排除しようとする動きもあるため、定置網へは近づかないようお願いします。

相模湾の怪魚と1時間以上格闘した話。

暑い日が続いて嫌ですね。どうも何某です。

今日のは結果から言うと、釣ったとしていいと思ってます。

遅く起きた朝。

運がいい

ダラダラと準備を始める。
仮眠のつもりが、しっかり睡眠を取ってしまった。
7時では駐車場の空きはないかなと思ったが、ちょうど一台だけ空きがあった。
運がいい。
これは今日は釣れちゃうかもな。などと思いながらカヤックを引っ張っていると、すれ違う釣り人が「暑くてやってらんねーよ。」と笑いながら話しかけてきた。
聞くと、カマスが食いきれないくらい釣れたので、満足して帰るらしい。
なるほど。だから駐車場に空きがあったのか。

何か大物がかかる

水深300m付近をクランキー290gを落とす。丁寧に誘うも反応は無い。
早くも相当な暑さだ。タオルを顔に巻いて照り返しを防ぐと、だいぶやわらいだ。
カヤックの周りでさざ波が立つ。何かがゆっくり小魚の後をつけているのだろうか。
届いたばかりのキャスティングタックル一式を、時間がないからと持ってこなかったが失敗だったかもしれない。
スパイファイブ220gに付け替えて、200m付近を流す。
ヒトシャクリめをゆっくり細かく刻む。底3m付近から大きくゆっくりワンピッチからのロングフォール。
3回目のロングフォールで、なんだか余計にテンションがかかってる気はした。
下げきったところから、一気に竿が曲がる。
『おっ、デカイかな?』などと思いながら巻き上げると、意外と素直に上がってきた。
最初だけかと思っていると、底から20m付近で何かがおかしいと気づく。
よく見ると竿先から海面にまでピンと張ったラインが、ゆっくりと小さな円を描いていた。
200m先の魚の動きがこんなに大きく出るのだろうか。
PEジガーの感度の良さのためか、頭を振ったのもラインの動きと手元の感覚でわかる。
底から40m。違和感がありつつも順調に巻いてきた。
やっぱり頭振ってるなぁ。そう思った刹那。
キィーン!
ガイドが鳴る。ギッギッギッっとドラグが苦しそうに悲鳴をあげた。
心臓を鷲掴みにされたような苦しさが襲う。握り潰しにきた掌をゆっくりと押し返すような動きを感じた。
「ドクン。。。」と心臓の音が聞こえたタイミングで、息を無理矢理吐き出す。
急いで息を吸い、再度吐き出す勢いでオシアジガーのスタードラグを思い切り回す。
ジャー!っと物凄い勢いでラインで放出される。
竿尻をカヤックに突き立て、伸ばした左手でしっかりロッドを持ち支える。
スローピッチジャーク用のロッドは、あまり立てると折れると聞く。全神経を左腕に集中し、テンションを抜き入れしながら、右手はクーラーボックスからスポーツドリンクを取り出す。
口でキャップを取りカヤック上に吐き捨て、塩気の強いドリンクを流し込んだ。
40mほどラインが出て行きやっと止まった。また一からやり直しだ。

過去体験したことがないやり取り

相当デカイのは間違いない。のんびりやってきてこんな大物がかかるなんて。やはり今日は運がいい。
メートル近い根魚だろうか。200m底の大物。全く思いつかない。いや、なんとなく可能性があるとすればサメだろうか。
ポンピングで20m巻いては10m引き出されるを繰り返す。いや、しかし確実にあがってはきているのだ。残り110mまできた。
時間を見ると9時を過ぎている。
もう30分も格闘しているのか。
ペットボトルが一本空になった。幸いなぜか今日は2本持ってきているので、クーラボックスに空を投げ入れ、飲み物を取り出した。
一口含み、残り90mまで巻き上げる。
またしてもラインが引き出される。200m底からの恒例行事ではあるが、今回は違った。ラインが走るのをやめない。それどころか20m引き出されたあたりから、さらに勢いを増している。
一気に底に向かって潜っているようだ。
『おぃおぃおぃ。』
呆れて声がでる。諦めてくれればいいものを。
慎重にドラグを締める。が、潜るのをやめてくれない。30分以上やり取りしてるのに、まだそんな体力残ってるのか。
ロッドのテンションを慎重に強くかけることで、やっと潜るのをやめてくれた。
結局160mまで潜られてしまう。
炎天下の中、外にいるだけで体力が削られる。ロッドを支えている左手はもうパンパンだ。
どうする。持ちかえて左腕を回復させるか。ただ、絶妙なやり取りの感覚は左腕の経験値でしか叩き出せない。
ドリンクがどんどん無くなっていく。
ドラグ調整してあれば、ゴリ巻きでいけるのだろうか。なんにせよ、こんなやり取りしたことがない。明らかに準備不足だった。

200m底から怪魚を浮かす

『もう切れてくれないかな。。。』

そう思いながら巻く。20m巻いては10m引き出されるを繰り返す。
もうドリンクが半分も無い。やるしかない。
ドラグを締め、巻き上げる覚悟を決める。
口を湿らすほどのドリンクを含み深呼吸。一気に巻き上げた。
残り50mから一気に残り20mまで。いけると思った刹那。一気に5mほどラインが出ていく。
うるせぇとハンドルに力を入れる。頭を振ったタイミングを見逃さず、一気に残り10mまで浮かせた。
タモを手元に置き、再び持ったハンドルを力まかせに巻く。
徐々に浮かび上がってくる魚影を見て、耳から抜ける心臓の音が聴こえるような感覚になる。
とんでもなくデカイ。
これは巻き上げていいヤツなのか。
カヤックに危険がおよぶヤツなのではないのか。
とりあえず何が釣れたのか確認しよう。水面まで浮かす。
グルン。と大きく円を描いて海上に横たわった顔を見て、歓喜の雄叫びをあげる。
特徴のある目。鋭い歯並び。間違い無い。バラムツだ。
一度は釣ってみたいと思っていた怪魚。人間が消化出来ない脂のため、流通が禁止されており、かつ、3切れ以上食してはいけないと言われるバラムツ。
まさか釣れるとは。
脳内麻薬で意識が飛びまくる中、冷静な自分が身体の異変を教えてくれる。
聞き耳を立てると、呼吸がうまく出来ていない。そこではじめて苦しいのに気づく。
無理やり右手で口と鼻を塞ぎ、水平線を見た。限界まで苦しくなったところで、胸を抑えて一気に吸い込まないよう、ゆっくり息をする。
何度か深呼吸して落ち着き、状況を確認すると、20mほどラインが引き出されていた。

取り込み出来ない

ゆっくりと浮かせ、取り込みの準備に入る。
そこで初めて気づく。このバラムツが入るタモが無い。
深さ40cmほどのタモだが、頭から入れればメートルくらいまでならなんとかなるだろうと思っていた。
しかし、この怪魚をよく観察すると、カヤックの半分近くほどある。
プロフィシュ45が確か14ftくらいだった気がする。それと比べると、2mは越えない気がするが、180cmは間違いなくあるだろう。
旋回してきたバラムツを頭からタモに入れてみる。
ちょっと頭を振っただけで、あっけなく出ていってしまった。
よくよく考えると、自分に、このタモ網をかぶせた状態と変わらないのか。取り込める気がしない。
バス持ちで無理やり。いや、いや、あの歯を見ただろう。手が無くなってしまう。
釣りキチ三平の谷地坊主よろしく、タオルで取り込むか。カヤックでは無理だな。
エラに手を突っ込むか。名案に思ったが、下手にエラを傷つけると死んでしまう。
持ち帰るなら手段を選ばないが、このサイズのバラムツを持ち帰っても、流通させれない以上、我が家では手に余る。
しょうがない。尻尾を持って引き上げよう。
再度旋回してきたバラムツがカヤックと平行になったタイミングで、尾をガッチリ掴んだ。と思ったのだが、手が回らない。がっしりとした男の手首を握ったような、筋肉の動きを感じる。
無理やり引き上げようとしたが、物凄い力で振りほどかれた後、カヤックに2、3度体当たりしてきた。
沈するほど揺れはしないが、このカヤックの向きが軽く変わるほどの力。恐ろしい。

物語の終演

海面まで1時間。それからさらに10分以上格闘している。なかなかバラムツという魚は体力があるようだ。
やっと冷静にバラムツを観察出来るようになってきたが、あらためて見ると、この2m近い魚体をカヤックにあげれる気がしない。
SUPなら滑り上がらせれるような気もするが、カヤックでは無理だ。ギャフがあれば、とりあえずの引き上げは可能そうだが、まさかこんな大物が釣れるとは考えておらず、持っていない。
周りを見ると、300mほど先にミニボートが1艇。試しに助けを求めて、声を出してみるが全く反応は無い。
しょうがない。せめて写真だけでも撮って、最後の取り込みを勝負しようとスマホを取り出そうとするが、右手一本ではうまいこと取り出せない。
ロックを解除してカメラを起動しようとしていたところ、海面で暴れる音がし、フッとロッドが軽くなった。
私は、ゆっくりと海底に戻っていく怪魚を、ただただ呆然と眺めるしかなかった。

タイドグラフ

タイドグラフ。

参考

© 2024 磁力式駆動 All Rights Reserved.
Theme by hiero