今年のハロウィンのコスプレはストロングスタイルでいこうと思います。どうも何某です。
見かけたら「お前、平田だろ。」とマスクを剥ぎ取りながらお声掛け下さい。
釣り人は機嫌が悪い
「釣り行けないからずっと機嫌悪いんだよ。風呂に魚入れて釣りすればいーじゃねーか。」
近所の居酒屋の店主が、70歳をとうに過ぎてる釣り好きの客をからかう。
「海に向かって何百メートルも投げるから気持ちいいんだ。」と、自他ともに認めるキス釣り名人は頬を膨らませた。
そのじゃれ合いを見て笑ってはいるが、正直こちらも内心穏やかではない。
毎週の台風のおかげで、しばらく釣りができておらず禁断症状が出ているのだ。
週末の予報も悪い中、友人から連絡が来る。
「冷凍庫のオキアミを処分してくれと嫁がうるさい。釣りに行こう。」
それをうけて、東伊豆でも釣りに行こうかと言ったところ、バイパスが開通したかどうかという時期らしい。
確かに今回の台風の影響は大きく、まだまだ跡を残している。ホームサーフの砂は大きく持っていかれてしまい、1mほど低くなってしまったように見えた。
ならばと初めてではあるが、西伊豆まで足を伸ばすことにする。予報ではちょうど風裏になるようだ。
場所取りを制するがしかし
前日の夜に西伊豆まで向かう。調べた話だと、大物が釣れ、数も釣れるとあって気合が入る。
いつの間にかナビに無い道を走っていた。どうやら新しい道路らしい。がしかし、戸惑ってる間に現場に到着。新しい道路のおかげで到着予想時間を1時間ほど短縮したようだ。
雨上がりの予報に合わせて出発したので、結構な雨である。
地磯前の駐車場を見ると車が停車している。釣り人が仮眠をしているようだ。
一旦車を停め釣座を確認しに行く。雨のせいか場所取りもしておらず、先行者はいない。
駐車場の釣り人はここに入るつもりなのだろう。急いで車に戻り荷物を降ろし釣座を確保する。
10月の雨だというのになかなか蒸し暑い。10kg以上の荷物を背負って山道を歩いたのでカッパの中は汗だくだ。汗をかいてしまっては透湿性も関係なしだ。
とりあえず準備しながらアジでも釣れればいいかと、磯竿にサビキをつけ投げてみる。
最近は常温保存出来るアミエビのパックがあるようでなかなか手軽で便利だ。
投げてる間に釣座を整えていく。が、そんな間もなく電気ウキが沈み込んだ。
謎の魚がついている。
調べてみるとハタンポという魚らしい。見たことがない。新しい場所は、こういった出会いがあるから面白い。
非常に美味いとは書いてはいるが、この手の常に外道扱いの評価はあまり信用していない。
リリースし、サビキが邪魔なのでコマセも入れずに投げておく。雨もあがったのでカッパを脱ぎ身支度を整えたい。
ところが入ったと同時にまたしても電気ウキが引き込まれた。あまりの勢いに大物でもかかったかと急いでアワせる。
がしかし、あがってきたのは全てのサビキについているハタンポ。
その後も気まぐれに投入するたびにハタンポが釣れる。30分足らずで軽く30匹は釣っただろう。
遊んだので次で最後にし、コマセの準備でもするかと投げる。一瞬でハタンポがかかり巻いてくると、手応えがおかしい。
なんだろうと竿先を見ると、ポッキリと折れていた。
軽いとはいえ、磯竿にはオモリの負荷がありすぎたのか。絡まったまま投げて折れてしまったのだろう。
やってしまったと、うなだれながらダクトテープを探す。とりあえずダクトテープで応急処置すればなんとかやりきれるのではないかとの考えだったが、自宅のテーブルの上に置いてきてしまったようだ。
仕方無しに先を折り、振り出しのガイドが抜けないようにゴム管をつけてやり過ごすことにした。
磯竿で夜釣りすると結構な頻度で折っている。ひさぶりで忘れていた。
ハタンポの猛攻止まず
やる気もなくなったので友人の様子を見に行く。がしかしこちらもハタンポが入れ食いである。
調べると夜行性とのことなので、夜明けまで寝て待つことにした。
広い磯なので安全な場所を確保し横になる。ライフジャケットのおかげで背中も痛くない。
波の音を聴きながら目を開けると、雲の切れ間に綺麗な星空が広がっていた。さすがにここまで来ると星が綺麗だ。
気持ちよく寝ていると、突然顔にライトを当てられた。何事かとライトの方向を見る。
磯の上から何者かがこちらの様子を伺っているようだ。
追い剥ぎだろうか。
静かに呼吸をし、指先まで動くのを確認しながら、ナイフの位置を思い出す。釣座のバケツの中だ。
釣座まで数歩ではあるが、足元が悪い。それを考慮して間合いを考えなければならない。本来はこういうことに使うつもりはないのだが、有事であれば仕方ない。
だがその機会はなかった。
去っていく後ろ姿を見ると釣り竿らしき影が見えた。おそらく先行者がいたので諦めたのだろう。
あらためて横になり、眠りにつくと、再度顔にライトを当てられる。
時計の明かりを気づかれないように隠しつつ時間を確認すると、3時前。先程の襲撃から40分近く過ぎている。
手元に置き直したナイフに指先を当てながら様子を伺うと、先程とは別の釣り師の二人組のようだ。
こちらも諦めたようで戻っていった。
そんなことが5時までに数回繰り返される。なかなか人気の磯のようだ。もし釣り人ではなく追い剥ぎであったなら、と考えるとゆっくり仮眠は出来なかったが、早めに入って良かった。
幸先よく
沸かしたコーヒーを飲みながら夜明けを待っていると友人も起きてきた。
身支度と釣座を整える。
コマセを作っていると友人がハタンポを釣り上げた。またかと笑いながらも、これがいなくなってからが勝負だと気合を入れる。
伊豆半島の西側だからなのか、日の出まで10分ほどの時間になっても薄暗い。
ハタンポが釣れなくなりエサが残るようになったとの報告を受けたので、急いで仕掛けを投入する。
1ヒロでとりあえず流してみるが反応は無い。
2ヒロに変えた1投目。手元のラインがピンと張るのと同時にウキが勢いよく入った。
アワせてみると大きなアイゴが浮かんできた。アイゴかと思いつつタモを入れるがギリギリ届かない。
5.4mでも長さが足りないようだ。友人にタモを持ってもらい、波の勢いを使って軽く持ち上げ空中で取り込み。
引きは凄いがアイゴでは、と急いでリリース。
タモの先を落としタモに変更し高さに対応。
満を持して2流し目。同じ場所でウキが勢いよく沈む。アワせると同時にズンと竿が満月になりギリギリと手元がキシむ。
トントントーンと軽快な叩きに『来たぞっ!!』と叫ぶ。
駆けつけた友人が取り込む。
30cmほどのメジナ。いい感じだ。ここから釣るぞと視線をあわせた。
時合短く
友人の竿が大きく曲がっている。取り込みしようと駆けつけると引き抜いていた。
「木っ端だよ。」と友人が空中でキャッチすると、勢いよく茶色の体液をかけられている。イスズミだった。
『おぃ、お前平田だろ!』
「イスズミ釣ると毎回言うけどそれはなんだんだ?」と疑問を投げかけてくる友人を無視して釣り座に戻る。
友人は「あぁやられたと。」とボヤキながらも手早く外しリリース。続いた流しでアイゴがかかっていた。
それを見ていた私にもアイゴがかかる。引きは楽しいが外道なうえ取り扱いが面倒なので嫌いだ。
アイゴ、イスズミを何度も相手しているうちに、友人のほうから声があがった。
何事かと近寄ると、30cm無いくらいのイサキが釣れていた。嬉しい外道ではあるが友人は面白くなさそうだ。
その後、立て続けにイサキをあげているようだが、どうにも満足いってないらしい。
とはいえ、潮通しがいいのではということで、本命の期待もあがる。
謎の魚を釣る
小さな餌取りが出てきた。速攻で付けエサが無くなるため、回避策をいろいろ試す。
うまく回避出来たと思っても、あがってくるのはアイゴとイスズミばかり。
水深は3ヒロほどのようなので、試しに思い切って底まで落としてからポイントを流すことにしてみる。
遠目に仕掛けを投入し、コマセをポイントに打つ。底についたままそのポイントを流していると、ウキが止まった。
根がかりしたかと思っていると、ウキがゆっくりと沈んでいく。
何事かとアワせてみると、一気に魚が走った。
メジナの引きでは無いが力強い。あまりの引きを見た友人がタモを持って近寄ってきた。
浮かんできた魚体を見て『なんだアイゴかぁ。』と声をあげる。
小さいわりに随分引いたなと笑いながら取り込んでみると、何やらアイゴではない魚がついている。
イサキかと思ったがどうにも違う。
『もしかしてタマンなんじゃないのか。』
その言葉をきっかけに調べると、ハマフエフキ、通称タマンの画像と一致した。小さいが間違いなくタマンである。
「なるほど、強烈に引くわけだ。」と初めて見る魚に感動し、キープした。
引きは楽しいが
大きなフグだと思っていたが、どうにも違うらしい。
コマセを巻くと群れで突撃してくる。そうなると餌取りすら散ってしまう。
少し低い釣座にいる友人に話すと、どうやら40cmほどのサメが群れでコマセを食いまくっているらしい。
なるほど、それは困ったなと根の奥に狙いをつけてみる。
全誘導で流していくとウキが消し込んだ。勢いつけアワせると宙を舞うベラ。そしてこれが続く。
手前はサメ、奥はベラ。
悩んだ末に、根の奥にサメを寄せて手前で釣ることに。がしかし、サメを留めるにはコマセが大量に必要。
昼過ぎまでやるつもりではあったが、この調子だと11時には終了してしまう。
一か八かではあったが、立て続けにアイゴとイスズミを釣る。
引きは楽しいが、流石にこれだけ外道を釣ると飽きてしまう。なんとか本命が欲しい。
最後3投くらいだなと投入する。ウキが止まったなと思った刹那、ゆっくりと沈みこんでいった。
これはさっき見たやつだなとアワせると強烈な引き。手応えがタマンだ。
とはいえ、ここまで引くとやはり面白い。いなしいなし巻いてくる。
魚体は大きくないので、引き抜き見てみると、思ったとおりタマンだ。
その後コマセも無くなったため11時過ぎに納竿とした。
飽きるほど釣ってはいるが、本命は1匹のみ。
外道があまり釣れすぎると、引きが楽しいといっても、ストレスのほうが大きくなってしまうのだな。
通うかもしれない
自宅へ戻る時間がナビで4時間近く。これは困ったなと思いつつも、東伊豆でもこの時間は渋滞になって変わらない可能性があるので諦める。
来た道を帰っていくと、途中で到着時間が2時間弱縮む。新しい道路の威力たるや。
普段は東伊豆より魚影が濃そうなので、これは通うかもしれないなと思いながら車を走らせた。