身体がガタガタです。どうも何某です。
今年の目標の一つ、新島のブランド金目鯛を釣るをついに達成してきました。
年始の話
『1kgのジグなんて何に使うんですか?』
買ったら話のネタになるかなと冗談で手に取ると、1万円近い値札がついていた。頭がおかしい。
「800gでも底取れない時に使うんですよ。もっと重いのもありますよ。」
いよいよ頭がおかしい。
使い所を聞いたところ、潮が速い所はこの重さでないと底が取れないのだという。
例えば「新島のキンメは800gからが基本だよ。」という話だ。
「新島のキンメ食べたら他のキンメは食べられなくなるよ。」
そんなに美味いのか。
「刺身を切ってるうちから美味い。」
なんだその表現は。
ぜひとも釣ってみたい。食してみたい。
そこで新島キンメ用のタックルを聞くと、1kgのジグを使うだけあって手持ちではとても流用出来ない。
では、次のシーズンまでに一式用意するので連れて行って欲しいとお願いした。
何もかもが初体験
深夜集合で港へ向かう。
この日のために買い揃えた荷物を釣船に積み込む。
キンメに必要かどうかはわからないが、内寸80cmのクーラーを待ってきた。笑われるかと思ったが、皆んな同じくらいのサイズだ。
キンメジギングの歴史はここ3年ほどらしく、まだまだ手探りの部分もあるとか。黎明期からやっている人達が、そのサイズを持ってくるとは。大漁、大物が期待が出来る。
4時前に出港するやいなや、船上から人が消えた。
「さて、寝ますか。」と声をかけられて船室に手招きされる。
船室に入るとベッドがいくつもある。そこの一つに潜り込み横になったが、緊張と期待で目がギンギンになり全く寝れない。そして何気に揺れる。
準備に手間取る
「はい、じゃー準備しましょうか。」
出港から1時間半ほど。船長が起こしに来ると、一斉に起き始め釣座に急ぐ。
ここで初めてジグを取り付ける。
「何ぐグラムからいきます?」
「800からすかねー。」
見るとスパイファイブを選択してるらしいので、じゃあと私はメサイア900gを選択。
アシストフックを付けていると周りはあっという間に準備が終わってる。
波も高く船が揺れるため、アイにスプリットリングを通すだけでも一苦労だ。ましてや1kg近いジグのアイは、極端に太いため余計に通せない。
「家でジグにフック付けて持ってきた方が楽ですよ。」と声をかけられる。
新島沖は波が高いため、揺れて付けにくいのと、船酔い防止のために極力細かい作業は避けた方がいいとアドバイスされる。
地獄のはじまり
「じゃ始めましょう。一番目の方どうぞー。」
ミヨシから船長のアナウンスに合わせて落としていく。ここでミスると一回休みになる。失敗は許されない。
私の番が来て投入する。何も考えずに投げ入れてはいけない。フックが手にあたったら1kgのジグの重さでフックはあっけなく手を貫通するだろう。大怪我。
慎重に手早く落とす。
サミングしてバックラッシュしないようにとの話だったので指を当てるのだが、1kg近いジグの落ちる速度は凄まじく、親指が火傷するくらい熱くなる。
慌ててレバーブレーキをフルに押し込む。そこから微調整。
5分ほどかかっただろうか。スプールの回転がピタっと止まる。着底だ。急いで10mほど糸フケを巻き取り底を取り直す。
ヒトシャクリ目。竿が上がらない。根掛かりだろうか。更に力を込めるとゆっくりと上がってきた。
ひたすら重い。この力で毎回シャクらないといけないのか。
これを一日中やるのだ。とてつもない絶望感が襲ってくる。
そもそも350m先でジグは動いてるのか。
再度落とし直すと底が取れない。ジグのロストが怖くなり巻き取る。一度回収しはじめると、おまつり防止のため再投入は許されない。
しかし重い。大人1人引っ張り上げてるかのようだ。
誰かが船長に水深を聞く。500m近いようだ。どうやら崖になってるらしい。底が取れないのではなく崖だったのだ。
「上げましょう。」のアナウンスがある。回収しようとするが一向に巻けない。
10分ほどかかっただろうか回収後は汗だくだ。
限界の向こう
2投しかしていないのに、腕と背中が早くもパンパンだ。すでに電動リールに切り替えた方もいる。
次休憩しようか、1回スキップしようかと悩む。
がしかし、一日10回落とせたらいいほうだという事前情報もあったので、少ないチャンスを無駄にするわけにはいかないとジグを放り込んだ。
潮が極端に速いのか、シャクるのも限界になってきた。
無慈悲に回収のアナウンスが流れる。釣れないで巻き上げるのが一番辛い。
「そんな巻き方したら竿折れちゃいますよ。」
あまりの重さに船縁に竿が当たってしまっていたらしく、慌ててアドバイスされる。
楽なロッドの持ち方や、膝に当てての回収の仕方など、いろいろ教えてもらうがとにかくキツイ。
『初めて中深海やった時と同じくらいキツイです。』
と言うと「あれと同じですぐ慣れますよ。後半楽になりますからゆっくりでも確実に巻きましょう。」と笑いながらアドバイスされる。
たしかにいつもの中深海は今ではなんとも思わなくなった。
いつかこの潮にも慣れることがあるのかと汗をかきながら巻く。
20分ほど巻いただろうか。すでに周りは巻き終わって次の流しの準備しているため、私が時間を使ってしまっているのが申し訳ない気になってくる。
「残り100mくらいで潮ゆるくなるから、一気に楽になりますよ。」
『もう100m切ってるんですけど全然重いっすね。これで軽いならもう次落とせないですよ。』
弱音を吐きながら10mほどまで巻き上げる。やっとだ、やっと終わる。
すると、船長が大声を出して寄ってきた。何事かと水面を見ると赤い魚影が浮かんでくる。
「キタキタキタぁ!!」と喜びながら船長はタモですくい上げた。
「やりましたね!」周りから声をかけられ、あぁ釣ったのかと座り込みながらゆるく実感した。
潮の緩みで一気に時合に
血抜きしたほうがいいなど言われ、へとへとになりながらも船上を動き回る。
そして投入の合図。てんやわんやでやっていたため、投入時にジグがひっかかりトラブルになってしまった。
投げ入れられないのでスキップしてくれとお願いすると、もたついてポイントが過ぎてしまったので流し直すのだという。私の前は着底前に回収になってしまった。申し訳ないと頭を下げて回る。
緊張しながら再度投入すると、先程までとは違い、比較的軽い手応えだ。
船長に潮緩んだか聞いてみたところ、少し緩んだなという返答が。そして、緩むと釣れ始めるよとのこと。
落とし直した直後に、コンコンコンと竿先にアタリが出た。
アワセを入れて持ち上げる。とはいえラインなんか伸び切ってアワセにもなっていないだろうが。
定期的に叩く引きに船長は「それそれぇ!!釣れてるねぇ!!」とご機嫌だ。
「ポンピングしないで波で船が上がったら止めて、下がる時に巻くと楽ですよ。」
と隣の方からアドバイスをもらう。なるほど。確かに楽だ。ゆっくり一定のリズムで巻いてくるとすんなり寄ってきた。
いいサイズのキンメだ。「これは美味いぞ!!」と船長がニコニコしながら喜んでいる。
船内全員が釣り上げ、さらに船長は笑顔になっていった。
モンスターが釣り上がる
気持ちに余裕が出てきたからか釣った実感が湧いてきた。
とりあえず家で食べる分には十分だ。あとはお世話になってる方に配る用のキンメを釣らないと。
糸フケを取ろうとしたところで、ガツガツと竿先が暴れた。隣から「早いっすね。もう釣れたんですか。」と声をかけられる。
ゆっくり巻き上げると、定期的に叩く。結構大きそうだと周りから声がする。慎重に慎重に巻き上げると、大きな魚体が見えてきた。
『これ2匹キンメついてますよ。重いわけだ。』
と言いながら振り返り船長にタモをお願いする。後ろから「でけぇ!!うわっ!!でけぇ!!」と騒ぐ声がする。
顔を戻すと大きな魚体が浮かんできていた。
黒い魚体。バカでかいクロムツだ。
「持って持って持って!!写真撮らせて!!写真撮らせてよっ!!」
興奮しながら船長がスマホを取り出し撮影する。
「ほら、クーラー大きくて良かったでしょ。」
周りの皆さんも喜んでくれた。素晴らしい方々だ。
バラしまくる
潮が再び重くなったが、感覚もわかってきたので、釣り開始よりも相当楽になった。
がしかし、ここで別な問題が発生する。潮が速いときのアタリが未だにわからないということだ。
巻き上げると100mを切ってからの緩い潮になった途端に、生体反応を感じ、『なんだ釣れてたのか。』となることが増えてきたのだ。
とはいえ、そういう場合はバラす。回収のつもりで巻いてるから適当に巻いてしまっているのだ。
全く手応えは無いが船長から「釣れてるよ。」と言われることもあった。上げてみるとフックに身の一部だけついており、船長の凄さを見せつけられる。
そんな中、気になることがあった。自分だけ底が取れないことがあるのだ。ジグを落とし直すとラインが延々と出ていく。さっきまで400mで底が取れていたのに、600mもラインが出ていく。
周りに聞くと同じ重さで底が取れているという。
残り時間も無い。またしても底がとれなくなった。
しょうがなく回収する。大きく巻き上げてからの落とし直しは禁止なのだ。
すると途中で手応を感じる。魚が釣れている。
ゆっくり巻き上げると手頃なサイズのキンメがあがってきた。
底が取れてなかったから回収したと話したところ、それはもう釣れてたんだよと教えられる。
キンメはジグを咥えたまま浮いているのでラインだけ出ていってしまうらしい。
あぁ、あれはアタリだったのか。全く気づかなかった。
その後数回で沖上がりとなった。
今日は浅場でいけたので20回近く流せているらしい。3回分の釣行分くらいやらせてもらっている。とてもいい経験をさせていただいた。
キンメを食ってみる
帰宅後、配る用にキンメに包丁を入れてみる。
内蔵を取ってるときから手が脂まみれだと思ってはいたが、身に包丁をいれたところ、べったりと脂が包丁についてきた。
うっすらとピンクがかった身から、透明ながらも粘度を持った脂が溢れ滴っているのを眺めていると、小生なんとも言えない気持ちになってくる。
まさに「切ってるうちから美味い。」という言葉がぴったりだった。。
息を潜め、キンメの腹を指で丁寧に開いては、したたる雫を指に塗りたくっている小生を見た嫁が「疲れているのかい?」と声をかけてきた。
『あぁ、いや、凄い脂だなと思って。』と慌ててキッチンに先程までなかった異変を腰ごと押さえつけ誤魔化す。
確かに凄い脂だと嫁も覗き込む。
せっかくだから少し食べてみようと、一部を刺身にして口に放り込み、ねっとりとした身を舌で押し開いてみた。舌先から喉の奥まで甘さが広がり、歯を当てると、勢いよく弾けるような感じ、そして次の瞬間雪のように無くなっていた。胃袋までキンメが通って行くのがわかる。食道ですら甘さを感じる。
人生で味わったことのないキンメだ。
嫁が食べていいか聞いてきたので、美味かったらホラ貝を吹いてくれとお願いしたところ、無視して口に放り込んでしまった。
しかしその直後、あまりの美味しさに悶絶。絶賛。
「絶対みんなに食べて貰ったほうが良い。これは凄い。」
興奮する嫁とまな板のキンメを見ながら、小生、早くも新島に行きたくなってしまっていた。